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【映画】海の沈黙は実話なの?元ネタとなった4つの話とは?

 

2024年11月22日公開の『海の沈黙』は巨匠・倉本聰氏が35年ぶりに手がけた映画です。

この『海の沈黙』は実話なのか?
原作や元ネタがあるのか?

についてお伝えしていきます。

【映画】海の沈黙(倉本聰原作)は実話?

海の沈黙は実話ではなくオリジナルストーリー

「海の沈黙」は、倉本聰氏が長年温めてきた完全なオリジナルストーリーです。

この映画は、実話を基にしているわけではありませんが、倉本氏自身が描きたかったテーマや問いを深く掘り下げた作品となっています。

作品の背景には、芸術や美に対する価値観、美しさをどう評価するのかといった普遍的なテーマがあります。

これにより、観客は単なるフィクションを超えた深いメッセージを感じ取ることができます。

 

倉本氏は「どうしても書いておきたかった」と語っており、この物語には脚本家としての長年の想いが込められています。

「60年前に仕込んだ子どもがやっと生まれてくれた」

引用:https://www.asahi.com/

 

オリジナルストーリーであることから、先入観なく新鮮な気持ちで楽しめるのも本作の魅力のひとつです。

観る人それぞれが独自の解釈を持つことができる物語として、多くの人にとって印象深い作品となっています。

 

同じ作品名でヴェルコールという方が書いた、「海の沈黙 星への歩み」という書籍がありますが、内容はナチ占領下のフランス国民を題材にしたものとなっていますので、今回公開される映画とは無関係だと考えられます。

【映画】海の沈黙(倉本聰原作)元ネタになった4つの話とは?

元ネタその①:永仁の壺(つぼ)事件

「永仁の壺(つぼ)事件」は、映画「海の沈黙」の背景となったエピソードのひとつです。

この事件は、1960年に鎌倉時代の美術品として重要文化財に指定されていた壺が、実際には昭和時代の作品であると判明したことから注目を集めました。

 

この壺は、当初「永仁」という刻印があることから鎌倉時代のものとされていました。

しかし、後に陶芸家・加藤唐九郎氏が昭和時代に制作したものとわかり、重要文化財の指定が取り消されました。

この出来事は、美術品の価値がその作者や時代背景によって大きく左右される現実を浮き彫りにしました。

 

倉本聰氏は、この事件を通じて「美の価値とは何か」を問いかけています。

 

「昨日まで美しいと言われていた作品が一気に価値を失う。美というものに対する疑問が湧いた」

引用:https://uminochinmoku2024.kas-sai.jp/

 

「時代が違うとわかった途端、作品を認めていた評論家も世間も美の価値を下げる。この風潮に納得がいかなくて、なんとか映画にしたいと思ってきた」

引用:https://www.asahi.com/

 

作品の背景や作者が判明した途端に評価が変わる現象に疑問を抱き、そのテーマを本作に取り入れました。

映画では、このような出来事をモチーフに、芸術の本質に迫る深いストーリーが展開されます。

「永仁の壺事件」は、映画が扱うテーマである「美の本質」に強い影響を与えており、現代でも考えさせられる題材といえるでしょう。

 

元ネタその②:師匠の絵の上に自作の絵を書いた画家

「海の沈黙」の元ネタには、画家が創作意欲に駆られ、師匠の絵の上に自分の作品を描いたエピソードが含まれています。

この話は、洋画家:中川一政画伯が22歳のときに制作した油彩画《霜のとける道》にまつわるものです。

当時、画材が簡単に手に入らない時代であったため、中川画伯は芸術家の岡本太郎さんの父である岡本一平さんからもらった絵を塗りつぶし、その上に新しい絵を描きました。

 

この絵の下には岡本一平さんが描いた女性像があり、晩年にX線撮影でその輪郭が明らかにされました。

長い間、画伯がこの出来事について語ることはなく、晩年に刊行された随筆『腹の虫』(1975年)で初めて絵に隠された秘話を明かしました。

また、1991年にTBSが制作した画伯のドキュメンタリー番組「われはでくなり」では、X線撮影によってこの絵の下に描かれていた丸髷を結った女性像の輪郭を確認するというシーンが紹介されています。下絵が浮かび上がってくる過程を淡々とした表情でご覧になっている中川画伯の姿も映っており、とても印象的な場面です。

引用:https://nakagawamuseum.jp/

 

 

この事実が公開された際、中川画伯自身は淡々とした態度で「キャンバスがなかったから描いた」と語り、その行動が創作の本質的な衝動からくるものであることを示しました。

 

この逸話は、芸術における「創作意欲」の力強さを象徴するとともに、作品の価値はその背景や作者に左右されるべきではないという哲学を物語っています。

 

この絵画について息子の岡本太郎さんは岡本一平さんに描いてあった絵はどんなものか後日対談で聞いた時、中川一政は「忘れてしまった」との淡々と答えたそうですw

元ネタその③:女性の全身に入れ墨を彫る男性彫り師

「海の沈黙」には、女性の全身に入れ墨を彫る男性彫り師のエピソードも元ネタとして取り入れられています。

このエピソードは、肉体をキャンバスとする特異な芸術表現を通じて、美の本質に迫る物語の一部を形作っています。

全身に入れ墨を彫るという行為は、女性自身が美しさを体現する存在になることを意味します。一方で、その行為には痛みや犠牲が伴います。

彫り師にとって、肉体という制約の中で美を追求する行為は、キャンバスに絵を描く以上に個人的で深い創作過程を含んでいます。

このエピソードが示すのは、美しさの定義が一律ではないということです。

彫り師が表現する「美」は一般的な基準とは異なるかもしれませんが、それが持つ力や意義は観る者に大きな影響を与えます。

映画では、こうした「型にはまらない美」について考えさせられるシーンが展開されますが、このエピソードの元ネタが何なのか見つけることが出来ませんでした。

分かり次第追記します!!

 

元ネタ:おまけ 迎え火のシーン

「海の沈黙」の中には、迎え火のシーンが登場します。

このシーンは、倉本聰氏が作品作りを進める過程で出会った実際の出来事に基づいています。

倉本氏は北海道天塩町の海岸を訪れた際、夕方に何人かの若者が太い木を何本も運んでいる姿を目撃しました。その光景に興味を抱き、理由を尋ねたところ、漁師仲間の1人が海で亡くなり、地域の風習で「迎え火」をたくためだと聞いたのです。

この地域では、漁師が海で亡くなると、迎え火をたいてその魂を迎え入れる風習があります。迎え火は「ここがあなたの場所だ」と示すとともに、「ここに戻ってきてほしい」という思いが込められたものです。

その火は何日にもわたり燃え続け、地域の人々が亡くなった仲間に向けて抱く深い敬意や思いを象徴しています。

 

倉本氏は、この迎え火の風景に強い感銘を受けたと語っています。

この体験は「海の沈黙」の原作・脚本を練り上げる過程で、作品の重要なポイントの一つとなりました。

映画では、迎え火が象徴的なシーンとして登場し、登場人物たちの心情や物語全体のテーマに深い意味を与えています。

迎え火のシーンがどのように描かれているのか、そしてその火がどのように人々の記憶や思いを結びつけるのか?

は、映画をみてからのお楽しみです!

このシーンは、観る人にとっても深い印象を残すのではないでしょうか。

【映画】海の沈黙(倉本聰原作)は実話?元ネタとなった3つの話とは?まとめ・・・

  • 「海の沈黙」は倉本聰が手掛けた完全オリジナルストーリー
  • 映画の背景には「美の価値とは何か」という普遍的なテーマがある
  • 実話ではなく複数の実在のエピソードをモチーフにしている
  • 元ネタのひとつは「永仁の壺事件」という美術品の贋作問題
  • 永仁の壺事件では作品の価値が作者や時代背景で左右された
  • 洋画家中川一政が師匠の絵を塗りつぶして描いた話も元ネタに含まれる
  • 女性の全身に入れ墨を彫る男性彫り師のエピソードもモチーフとなった
  • 天塩町で倉本が見た迎え火の風景が象徴的なシーンとして描かれる
  • 映画は芸術の本質を問い、観客に独自の解釈を促す作品となっている
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